YMCA保育園ねがい公益財団法人東京YMCA_東京都認可保育所

「一人ひとりのこどもが愛されていると感じることができるように!」
精神Sprit、知性mind、身体bodyの調和と人格の形成をめざして

YMCA保育園ねがいは、園児数79名の認可保育所です。都心とは思えないほど緑豊かな環境にあります。東京YMCAで長年、社会教育活動にも携わってきたご経験を持つ今井園長先生に、園や園舎の特徴や、保育に対する想いについてお話しを伺いました。

YMCA保育園ねがい

YMCAについて

歴史と伝統あるYMCAの精神を具現化する保育を実践

都心の真ん中にありながら緑豊かな環境にめぐまれた園舎
都心の真ん中にありながら緑豊かな環境にめぐまれた園舎

私たちの母体であるYMCAは、キリスト教青年会(Young Men's Christian Association)として、1844年にロンドンで誕生した青少年の育成を願って誕生した世界119か国と地域に拠点のある非営利団体です。

園の設置者である「東京YMCA」の歴史も古く、1880年に設立され、一人ひとりのこどもが愛されていると感じることができるように「精神Sprit」「知性mind」「身体 body」の調和のとれた成長を大切に、職業教育、語学教育、健康教育、野外教育、保育事業、国際交流活動など、幅広い事業を展開しています。

保育園としても、戦後間もない1951年に江東区で育心会保育園を設立し、現在では、当園を含め13か所で保育所を運営しています。

「YMCA保育園ねがい」の名前の由来は、こちらの船橋地区の地名である「希望ヶ丘」から名付けられました。子どもたちはもちろん、保育園に集うみんなの「希」=「ねがい」が集まり、認め合える場所に、という意味が込められています。

こちらの建物(UR住宅の1階部分)は以前、世田谷区立希望ヶ丘保育園だったのですが近隣の中学校跡地に移転となり、東京YMCAがそのあとの敷地を受け継いだのです。もともと奥沢で運営していた「YMCAチャイルドケアセンター」が2019年に認可化し、同年7月にこの地で「YMCA保育園ねがい」としてスタートしました。

私がこちらに赴任前の話ですが、何よりも園舎の建て替えがとても大変で、築50年ぐらいのURの建物と、世田谷区が増設した建物全体を、間取りや内装、水回りも含め大幅に改修しました。園庭に面している所は、現在は全部ガラス戸で開放的なつくりになっていますが、改修前は全部壁で年齢別に0~5歳まで区切られ小さな窓と入口だけがあるつくりになっていたんです。その頑強なコンクリートをまず削り、できるだけ風通し良く、陽の光が入る明るい園舎に改築しました。まさに大改築です。上階にお住まいの方のご理解とご協力あって実現したのだと思います。

YMCAは、産業革命の時代に、志を持つ12人の青年によって学校教育ではなく、社会教育の団体を始めようという目的のもとロンドンで設立されました。ボーイスカウト、ガールスカウト、生協、赤十字などと共に、世界中に広がっていきました。当時は、産業革命のムーヴメントの裏で、貧困や児童労働などが問題になっており、民間団体の活動が社会を支えていたんですね。

日本では明治維新のときに、宣教師が来日しYMCAを設立しました。現在では日本YMCA同盟をはじめ東京・神戸・横浜でそれぞれ公益財団法人となっています。そのほかにも、社会福祉法人や学校法人も運営しています。県庁所在地に1つぐらいの規模で全国にYMCAがあるんですよ。

日本全国のYMCAでマークやロゴがバラバラだったのですが、数年前に日本のYMCA全体でブランディングの統一に取り組みました。理念の明確化と一体感の醸成と共に、乳幼児教育、保育園、幼稚園、こども園、英語の幼児園、未就学児のデイサービスなど事業部全体としての方向性も示されました。それを受けて、「東京YMCAが目指す保育を実践するために」といった資料等をもとに、保育園でも法人の理念・使命・方針・目標を再確認しました。

YMCA保育園ねがいの保育について

五感で感じたことを表現できる子どもに
子どもだけでなく大人も成長し続ける

保育室は年齢別に十分な面積を確保している
保育室は年齢別に十分な面積を確保している

トップダウンではなく、共有・共感しながらつくりあげていく

世田谷区では、待機児童は減ってきてはいますが、子育て世帯は引き続き増加傾向のようです。

保育の面ではでは、法人の理念でもある「精神Sprit」「知性mind」「身体 body」の調和のとれた子どもの育ちを支えるということを軸に据え、五感と感性を大切にした保育を実践しています。

五感で感じたことを、頭で考え、体で表現していく自然や人間関係などの中で、自分がどう感じ、どう心が動いたのか。そしてそれをどのように自己表現していくか……すべてつながっているんですね。育みたい「知恵」もそれは単なる“知識”ではなく、おそらく究極の知恵は、人と人との関わりの中で発揮されるものではないでしょうか。

「キャラクター・ディベロップメント」つまり「人格の成長」をめざすこと、それは子どもも働く人も同じことです。さまざまな人とのかかわりの中で考え感じ表現し、最終的には「平和をつくる」ことをめざす人を育むことが保育者の使命だと思っています。当園はまだまだ新しい園ですが、理念に忠実に、どのように保育の中で具現化していくかということに、まさにいま、挑戦しているところです。

YMCAは、「それぞれが、それぞれの仕方で自立していく」ということを掲げていますので、当園でも職員も含めトップダウンで誰かが決めたことを、みんなに伝えるというよりは、現場からの声を大切に、「子どもがいま、何を思っているのか」「子どもに対して大人がどうかかわっていくか」について共有・共感しながら、その時にできるベストを尽くしていくということを目指しています。

私の専門はもともとキリスト教教育だったのですが、グループワークや、「キャラクター・ディベロップメント」などについてずっと学んできました。小学校や中学・高等学校の教員や社会教育の領域にいた時期も長かったんですね。

保育士自身も日本の学校教育の一斉指導で育っているので、その概念や意識を根本から変えるのが、とても難しいと感じています。みんないま、「子ども主体」の理念に賛同して、頭では分かっているんですけど、実際どのように変革していったらいいのかわからない。やはり自分が受けてきた教育の記憶や、自分の過ごしてきた幼児体験を、保育の場でも無意識のうちに出してしまうことがあります。

それは一概に悪いことばかりではないのですが、「あれ?いま、もしかして不適切な対応だったんじゃないか」とか、もしかしたら「子どもの人権を損なっているようなことを言っていたかもしれない」と、気づいていくことが大切。言葉がけ一つとっても、子どもが主体的に生きていくために、大人がどんな支援をしていかれるかについて、私たちもいま試行錯誤を繰り返しているところです。

YMCA保育園ねがいの園舎・園庭について

子どもの主体性を大切にしながら生活や遊びを援助し見守る保育

広々とした園庭は、ごっこ遊びがたのしい小屋や小山など表情豊か
広々とした園庭は、ごっこ遊びがたのしい小屋や小山など表情豊か

オープンな園舎は東京YMCAの保育施設の特色でもあるのですが、当園も、園庭を囲むように保育室が並んでおり、全てサンデッキでつながっているんですよ。回遊できるようになっていることで、向かい側のクラスの様子や、園庭で今どのクラスが遊んでいるのかな、など生活の気配が感じられるつくりになっています。

園庭は広くて砂場もあり、旧公立保育園時代のプールの形も、そのまま使わせてもらっています。虫探しをする子どもの姿も見られます。きょうだい児も多いので、0歳児はもちろん、静かな環境でくつろいで過ごせるように独立していますが、赤ちゃんの部屋をお兄ちゃんお姉ちゃんがサンデッキ越しに覗きにきたり、年長児の様子を1・2歳児クラスの子どもたちが興味津々で眺めていたりします。1・2歳児室、3~5歳児の保育室はそれぞれ間仕切りでつながっており互いに行き来もできるので、自然な異年齢保育ができているのかなと思います。各保育室はコーナー保育も取り入れ、自主的な遊びが展開されるよう工夫しています。

自分が自分を愛し、自分と同じように隣の人も愛すること。


聖書でも有名な「自分を愛するように隣人を愛しなさい」いわゆるゴールデンルールというものがありますよね。

自分が受け入れられて、愛されていることを経験する……それは、親かもしれないし、保育士かもしれないし、全部与えられなかったとしても神様は守ってくれる。愛して受け入れて、ありのままの姿を受け入れてもらっている。でもまずは何よりも自分が自分のことを受け入れて愛する経験が大切ですよね。愛されてる自分なんだから、愛される価値のある自分だから、隣に同じように愛されてる人がいるから、同じように受け入れられたらいいね、と思えること……自分が自分を愛し、自分と同じように隣の人も愛すること。

これは保育の目標にとどまらず、生涯続く人生の目標です。0歳でわかる人もいるし、もしかしたら100歳まで、死ぬ時までそれがわからない人もいるかもしれない。それは生涯の目標ですよね。「幼児教育の~10の姿」のように、卒園するときに身に着けないといけない、そんなレベルの話ではありませんね。遠い北極星のような目標ですが、そんな普遍的で本質的なことを、伝えていかれたらと思っています。

YMCA保育園ねがいの職員について

保育士一人ひとりの成長も長い目で見守る

長年、青少年の社会教育活動にも携わってきた今井園長先生
長年、青少年の社会教育活動にも携わってきた今井園長先生

どんなにいい保育理念も、トップダウンで「これをしなさい」と言ってしまったら、もう主体性じゃないと思います。

どこで気がつき、疑問に思ってトライしてみて、失敗を重ねながら、自分たちのものにしてくことが一番大事かなと思うんです。毎日、昼に引継ぎミーティングをしています。そこで小さなヒアリハットなどの報告や連絡事項を伝えます。各クラスのミーティングも適宜行っています。また園長、幼児主任、乳児主任の主任会で「いま課題になっていることはどんなことだろう」と話し合い、「職員会議で研修してみよう、話し合ってみよう」という流れにしています。

世田谷区も、とても研修が盛んで、キャリアに応じてステップアップしていかれる仕組みが整っていますので、その機会を活用して、例えば「中間管理職研修」のようなところで出た話題や宿題をそれぞれが持ち寄って話し合いのテーマにすることもあります。みんなで課題を共有して、まさに園舎のように、風通しよく光が届くという形を目指してます。

職員の年齢層は比較的若いですが、途中採用のベテランもいますし、経験豊かな非常勤もいます。

保育士は、最たる感情労働だと私は考えています。「誰かを愛し、心を分かち合いたい」という志をもって保育士になったものの、実際に現場でやっている行動が時々、独りよがりになってしまったり、思いの押し付けになったりしてしまう人が時々います。本人も、その時できる最善のことを考えて懸命に行動しているのですが、他の人からみたら「ちょっと違うんじゃない?」というときに、現場の先輩が「今のはどういう思いでしたの?」と気づいて声がけをしてあげられるような、寄り添う指導を目指していきたいと思っています。個性や人格を受け止め、行動も認めた上で、「理念と照らし合わせて、どうかしら?」と意見を投げかける。それを受け止めた本人が、自分の中でどう熟成して次にどのように行動していくのか……長い目で、複数の目で見ていきます。

自己肯定感をもつことが大切だと思います


以前、横浜市内で園長をしていた時に、園長会の研修で「どういう保育士が、理想の保育士だろう」ということを、結構時間をかけて、話し合ったことがあるんです。最後の落としどころは、「いい人」(笑)。どういう人が「いい人」かというと、自己肯定感のある人だと思っています。

例えば、自分自身が幼少期に周囲の大人から虐待を受けていたりして、とても悲しい場面がフラッシュバックしたり、「もしかしてあれは虐待だったのかも」と成長してからPTSDになるような場合もありますよね。そんな感情をどういう風に乗り越えてきたかということが、職業人として、プロの保育士としての肝だと思っているんですね。自己肯定感があれば、それが拠り所となって困難を乗り越えていかれると思うんです。

自己肯定感を保育士自身が持っていないと、保育をしている中で苦しくなっちゃうと思うんです。できれば笑って保育してほしい。一時的に仕事で悩んだりして泣いたとしても「あの時泣けてよかったね、痛かったよね、悲しかったよね、苦しかったよね……でも今は笑えてよかったね」ってなれたらいいですよね。

裏にはビオトープが。めだかものびのび泳いでいる。
裏にはビオトープが。めだかものびのび泳いでいる。

いま、その時の子どもの姿を捉えること

スケッチブックを使ってその日の様子を写真で伝える「ポートフォリオ」にも力を入れています。保育ドキュメンテーションにも取り組んでいる最中です。この取り組みによって、保育士の目線も変わってきました。0・1・2歳児はまだ自他の確立が出来ていませんから、一人で遊んでいたり、大人と1対1など顔のアップの写真が多かったんです。一方幼児の子たちは、お友達との外遊びや、制作、歌やごっこ遊びをしていたり集中して遊んでいることが多いので、その姿を保育士目線で写し始めていたら、その目線がだんだん乳児の方にも広がってきて、"いま、その時の子どもの姿"を捉えられるようになってきたんですね。とても良い相乗効果を生んでいると思います。

来年に向けてはアプリも使いながら、保護者への共有にどう活用していこうか、ポートフォリオをどのように共有していこうかと、今計画している最中です。

残業の削減についても法人全体で取り組んでいます。仕事内容の見直しと、時間配分の見直しが当面の目標ですね。例えば書く分量も、今まで10行書いていたのを2行にまとめて、時間も5分の1できる。必要なことだけ記録に残せばいいですからね。基本的に連絡帳や保育書類はほぼアプリですが、紙で書いたものも残しています。

YMCA保育園ねがいの行事について

行事の意義を見直すきっかけに。
職員間で話し合い工夫して実施。

花壇で虫探しをしたり、園庭を走り回ったり。遊びこめる環境が整っている。
花壇で虫探しをしたり、園庭を走り回ったり。遊びこめる環境が整っている。

日頃の保育を行事で表現し共有する

子どもたちに季節ごとにいろいろな経験させてあげたい、そのためにこれまで多彩な行事を実施してきました。しかし残念ながらコロナ禍で多くの行事が中止や縮小になってしまいましたが、行事について考え直すきっかけになったと思っています。職員間で検討を重ね、できる限り開催できるようにさまざまな工夫を凝らしています。

例えば運動会、夕涼み会、クリスマス会、卒園式など、園の伝統的な行事は続けながら「行事のための準備はしない」ということを基本にしています。日頃の保育の中で、興味を持っていたり深めたりしたものが、行事の中で表現できて、それを家庭と共有できてたらいいな、というスタンスに変えていきました。全員揃って同じ事をするとか、どこか大きな会場を借りてみんなでやる、という考え方から切り替え始めたんですね。小グループに分かれて実施したり、運動会では親子でグループに分かれて、体を使って楽しんだりするようなプログラムに変えたりしています。保護者の方も、説明すると皆さん理解して協力してくださって助かっています。

YMCAは、健康事業や教育、体操、野外活動など、さまざまな事業を行っているのですが、その中にYMCAの活動を支援してくれる「ワイズメンズクラブ」というサポーターの人たちがいるんです。経堂にYMCAの拠点があって、ご近所の方たちも多く、園の運営に力を貸してくださっているんです。植栽のプランターはワイズメンズの園芸チームの方が、年に4、5回植物を植え替えに来てくれたり、メンテナンスしてくれたりしています。今年はゴーヤやヘチマなどを日除け用に育てようと思っています。時々保護者からも参加者を募って、一緒に球根や種を植えたりもしています。またビオトープもワイズメンスの方が作ってくださったんです。メダカがいるんですよ。

開園以来、園庭開放などの地域子育て支援事業にも取り組んでいますが、コロナ禍で今は少しお休みしています。今後も状況を見極めながら地域に貢献していきたいと思います。

取材を終えて・・・

「子どもを真ん中に、職員がチームで安定した保育ができる。」

YMCAといえば、全国のみならず世界中に拠点を構え、その名前を聞いたことがない人はいないくらい歴史と実績がある法人。その安定感はもちろん、印象的だったのは、風通しがよく光があふれる園舎!そして子どもたちが本当に楽しそうに遊びこんでいることです。やさしくゆったりと見守る保育ができるのも、保育の理念や方針がどっしりとしているからこそ。楽しみながら地に足のついた保育をしたい、そんな保育士さんにはおすすめの園です。

この保育園の施設概要

施設名 YMCA保育園ねがい
勤務地 東京都世田谷区船橋6-26-5-101
最寄り駅 小田急バス/京王バス 「希望ヶ丘団地」下車 徒歩1分

写真でわかる!保育園の様子

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