にじのそら保育園 芝浦社会福祉法人 ひかり会

にじのそら保育園は、0・1・2歳児が中心の、小規模認可保育園です。タワーマンションやオフィスビルが立ち並ぶ都会の一等地にありながら、園庭もあり、園舎は広々! 運営しているのは、宮崎県でお寺を営んでいた歴史ある法人です。海外でも保育を学ばれた、岩田美春理事長先生と岩田将悟園長先生にお話しを伺いました。

にじのそら保育園 芝浦

法人の理念

オーストラリアでも保育を経験。
歴史ある法人にグローバルな視点を取り入れて

理事長:宮崎県で法人を立ち上げたのは私の祖父で、55年続いています。昭和40年代って、すごく子どもが多いときに、祖父がお寺さんをしていたんですね。近所の方から、農家が忙しいので保育園をやってもらいたいと、地元で声があがっていました。そこで祖父が自分のなけなしのお金で、法人を立ち上げたんです。規模は、当時から田舎にしたら大きかったんじゃないかな、60人規模でした。それだけ保育園が必要とされていたんですね。
その後、それでも足りなくなり、90人定員にしましたが、少子化が進むのも早くて、現在は60人に戻っています。平成27年に、認定こども園になりました。

法人の理念は「おおきな家族」。保護者と地域の方と保育士とみんなで、子どもも見守りましょう。家族のように見守りましょう、という意味が込められています。

祖父のあとは母がずっと理事長をしていたのですが、昨年亡くなり、私が就任しました。私自身も保育士ですが、若い頃は、自分の実家の保育園ではなく、大阪や奈良などで保育士として働いてきました。

私は若い頃から知的好奇心が強いんですね。知らないことを知ることが楽しくて仕方ないんです。そんなこともあって、子育て中に息子と一緒に、オーストラリアに2年間、留学というか、ボランティアとして行きました。1998年から2000年にかけて、シドニーオリンピックの時です。最初は、アデレード、そしてキャンベラ。ニュージーランドにも行きましたね。ニュージーランドの保育園は、保護者たちによるパートナーシップの運営。友人同士共同で立ち上げていて、とても活気的で刺激的でしたよ。

園長:私は工学部出身で、保育士の資格を取ることは最初考えていなかったのですが、在学中に進路変更し、保育士の資格を取りたいと、勉強して取得しました。保育士をしていた母の話をいつも聞いていたことも影響したのだと思います。私自身も子どもが好きだったんですね。そして、代々引き継がれてきた実業を大切にしたいと考えたんですね。
保育の面では、夏休みとか小学生の時は、帰省して保育園で過ごしていたので、保育園の現場で祖母が子どもとかかわる姿をよく見ていましたから、祖母の影響もとても大きいと思います。
母がオーストラリアに行くことになった当時、私は小学2年生から4年生だったので、外国人向けの学校に入ったのですが、さまざまな人種の方と一緒に、たどたどしい英語でコミュニケーションとりながら過ごしました。とても楽しかったですよ。

理事長:私は日中、現地の保育園でボランティアをしていました。日本でもようやく「子どもの人権擁護」について取り組まれるようになりましたが、オーストラリアは、子どもの人権擁護については当たり前ですし、食育に関しても先進国。オーガニックの食材を取り入れた食文化が日本より20年は早く取り組まれていました。とても刺激を受けたんですね。
オーストラリアで学んだことは、いま私たちの法人の保育にも取り入れています。

大切にしていること

小規模園のメリットを生かし
ゆったりとした関わりをチーム保育で

「オーストラリアでの貴重な保育経験が、現在につながっています」いつもアクティブな岩田美春理事長先生。
「オーストラリアでの貴重な保育経験が、現在につながっています」いつもアクティブな岩田美春理事長先生。

理事長:「東京にも保育園を作りたい」と、こちらの港区で7・8年間物件を探していました。こちらの園は、もともと30人の保育園があったところなのですが、偶然にもこちらの物件が空いていたのです。当時、港区が小規模保育所に力を入れて募集しており、タイミングよく開園することができました。東京は行政からの情報が、保育事業者に降りてくるのが地方と比べて非常にスピーディだな、と感じます。

このあたりの地域の特色としては、多様性が豊か。国際色も豊かです。だからこそより丁寧な対応が必要です。保護者に説明しているのは、ゆったりした関わりを大切にしているということ。一人の先生が一人の子どもと関われる時間が多いのが、
小規模園ならではの強みですね。
小さい子たち、0、1、2歳の子たちなので、まずはストレスが少ない小規模の集団から、慣れてもらうことができます。慣れ保育なども、比較的短い期間で終わることができるんですよ。


一方で、小さい園なので、行事はやりづらいといったイメージがあるかもしれません。無理のない範囲で、季節ごとに行事を取り入れています。ここ数年は、コロナで全然できなかったのですが、運動会、発表会、入園式、卒園式も、時間帯を分けたりと、工夫しながら行いました。
運動会は、近くの公園の一角をお借りして、普段している運動遊びをします。運動会ごっこですね。とくに練習などはしません。
卒園式は、個別で行っています。1週間ぐらい期間を設けて、帰る時間に設定して一組ずつ、その子だけの卒園式。保護者の方から評判がいいんですよ。
卒園した後の受け入れ先、連携園は港区が保証してくれます。これも、小規模保育園を利用しやすい要因になっているかなと思います。

港区も、少子化が進んでいますが、見学の方は多いですね。コロナの間は、港区全体で入園児が減ってしまい、大変でした。当園では、一時預かりもしていますので、そちらから入園してくれる方もいます。

また、地域の未就園児の保護者向けに、子育て支援のための離乳食教室も、不定期ではありますが開催しています。今度、絵本作家の木村だいすけさんを招いて、読み聞かせのワークショップをするんですよ。こうした企画は理事長はじめ、みんなで考えています。

保育の特徴

子どもの興味関心を中心に、保育環境を設定
日本舞踊や花育など、ユニークな活動も

チーム保育をベースに子育て支援の企画も積極的に取り入れながら、子どもに寄り添う保育を何よりも大切にしている、岩田将悟園長先生。
チーム保育をベースに子育て支援の企画も積極的に取り入れながら、子どもに寄り添う保育を何よりも大切にしている、岩田将悟園長先生。

園長:いま、宇宙が好きな男の子がいるんですが、面白いな、と思って。そこで地球儀や布、壁面などでちょっとずつ、保育室を宇宙空間にしていっているんですよ。去年は恐竜。子どもの興味や関心に合わせ、都度見直しながら、こまめに環境設定をしています。保育室は、天然木をふんだんに利用していて、設計にもこだわりました。窓も広めにとっているので明るいんです。窓とソファーはボーネルンドさんが全面監修してくれました。

この園ならではの活動としては、日本舞踊があります。非常勤の職員が、日本舞踊の舞台に立っているんですが、週1回月曜日、主活動の時間に子どもたちと楽しんでいます。開園の頃から、5年ぐらい続けています。童謡音楽を流しながら、みんなで踊るんです。浴衣を着て、扇子や鞠などを手作りして。日本の伝統的な所作や音色に触れてもらおうという取組みです。小さい子どもたちが一生懸命に踊る姿はとっても可愛らしいですよ。保護者にもご好評をいただいています。
また「花育」も行っています。植物を育てることって、結構、繊細ですよね。例えば、種を植えたり、お水をあげたり、少し力を入れたら、ちぎれてしまう。そういった微細運動、指先の器用さを養うことにもつながるんです。花壇やプランターに、花や野菜を植えています。失敗したりもするんですが、それもまた楽しい学びです。

都会の真ん中なので、自然のものを保育の中に取り入れるのがなかなか難しい。花、魚、虫…できる範囲で環境設定をして、自然に少しでも触れられる機会を設けてあげたい、という想いがあります。園内に、大きな水槽を置いたりしているのもその一環です。

食事にもこだわっています。宮崎のよさを保護者の方に伝えていきたいっていうのもあって。食材にはこだわっていますね。農家さんともつながりがあるので、宮崎のお米や調味料を使っています。

地域との交流は、コロナ禍でなかなかできなかったのですが、去年は、バイオリン教室も開催しました。嘱託医の先生が、娘さんとバイオリンをされているので、園内で伴奏していただいたんですよ。

法人として考えていること

普遍的な保育を大切にしながら
時代のニーズに合う保育を柔軟に提供していきたい

オーガニックの食材をつかった、手づくりの美味しい給食。調理員も積極的に子どもたちに保育にかかわっている。
オーガニックの食材をつかった、手づくりの美味しい給食。調理員も積極的に子どもたちに保育にかかわっている。

理事長:その時代にあった保育みたいなのは目指さなきゃいけないかな、と思っています。私たちの世代が紡いできた保育の知恵を受け継ぎながらも、若い人が考える社会や、子育ての仕方を受け入れて、柔軟に、その時代に合った保育をしていく必要はあると考えています。もちろん、子どもの生命を守る、預かるというベースは変わることはありません。

ただ、子どもの数が減っているので、地方はなかなか厳しくて。宮崎県では、病児保育も実施しており、こちらの需要がとても高いです。
地域に1か所しか病児保育をやっているところがないんですね。コロナ禍でも、年間400人ぐらいはお預かりしていました。
なぜ病児保育を始めたかというと、私の娘がとても体が弱かったんですね。主人が朝早くから仕事をしていたので、私が一人で面倒を見なくてはならなかった。
そういうお母さんたちを見て、私もかつてそうだったという経験から「大変だな、何かできないだろうか」と考えていたんですね。そんなときに、ちょうど自治体から「病児保育をしていただける園はありませんか」と保育園に声をかけたんですが、誰も手をあげなくて。「これはチャンス!」と思って手を挙げたんです。最初の4年間ぐらいはマイナスでしたが、現在は安定してきました。

宮崎県で行っている病児保育は、1日最高8名まで預かることができます。コロナ明けで、免疫力が弱くなってしまったのか、感染症の子は多いですね。そちらには、看護師と保育士が常駐しているので、保護者の方にも安心して預けていただいています。

保育園の運営は、少子化の時代の流れの中で、だんだん厳しくはなっていくでしょう。でも地方と首都圏を比べて、都会はまだまだ保育園の需要が高いなと感じています。

働きやすい職場づくり・求める人物像

大切なのは、保育のスキルではなく人が好きなこと。
そしてチームワーク。いつでも子どもを真ん中に。

玄関にはSDGsの目標も。少しずつ、できることから自然や環境保全の活動も取り入れている。
玄関にはSDGsの目標も。少しずつ、できることから自然や環境保全の活動も取り入れている。

若い保育士が多い園ではありますが、保育士、栄養士、看護師もおり、そこが保護者の安心につながっていると考えています。また地方出身の職員も多いです。

また園内研修にもさまざまなプロジェクトを設け、園内研修にも力を入れています。
今年度は、リスクマネージメントがテーマです。いわゆる不適切保育についても取り組んでいます。理事長である私がまずはきちんと把握してから現場におろしていきます。
例えば、保育の安全研究・教育センターの掛札逸美先生の、YouTube動画も活用させていただいています。掛札先生は、多角的な視点で現場の立場にたって、具体的に話してくださるので、とても勉強になります。現場では、例えば、少し気になる保育士がいる場合には、言葉がけや子どもとのかかわりなどまず「どうしたの?」と聞くようにします。

園長:保育はチームでつくるものです。プロジェクトで多様なテーマに取り組む活動を今年から始めました。例えば、保育の安全を考えるチーム、自然の物を保育に取り入れるチーム、情報発信、保護者や地域の方に宣伝をするチーム……と分けています。固定のメンバーではなく、ローテーションで臨機応変に、いろいろな観点から保育を見られるようにしています。小さい園だからこそできることかなと思っています。
とはいえ、なかなか時間を見つけるのが大変なので、職員のスケジュールを考えて進めています。会議の内容も可視化して、いま進めている業務やチームの進捗状況を、みんなで確認し合えるようにしています。

また、最近始めたばかりなのですが、企業さんからのご提案もあって、フードロス削減のために規格外になったお菓子を、サブスクで定期購入しています。訳アリのお菓子をダンボールで購入して、それを保育士に休憩時などに食べてもらっています。SDGsの取組でもあります。

職員室にあるモニターで、保育室を定点的に視ることができる。保護者の安心安全にもつながっている。
職員室にあるモニターで、保育室を定点的に視ることができる。保護者の安心安全にもつながっている。

園長:理事長がいつも言っているのですが、もっと仕事は楽しく、遊びは真面目に。仕事とプライベートとはしっかり分けてもらって、プライベート充実している方が、仕事にも反映されるので、時間外は基本ないですし、あっても月2時間ぐらいですね、
休憩も有休も、しっかりとっています。遊びを思いっきり楽しむこと、いろいろなアンテナを張ることで、結果的に良い保育につながっていくと考えています。
そして、何より素直で、学ぶ意欲を持ち続けている方。保育面でのスキルとかそうではなくて、コミュニケーションスキルが大切だと思っています。

【取材を終えて】

子どもも大人も、自分らしくいられる、安心感

取材中にもトコトコと、事務室に子どもたちが遊びに来てくれました。「子どもは自由に入れるようにしているんですよ」と園長先生。職員が、一人ひとりとスキンシップをはかり、子どもの表情を見ながら、ゆったりと対応している姿が印象的でした。何といっても、底抜けに明るい理事長先生の、子どもの育ちを見つめるあたたかいまなざし。そして、穏やかでやさしい園長先生のコンビネーションが、ほっこりあたたかい気持ちにさせてくれます。ユニークな活動にチャレンジし続けながら、歴史ある法人の安心感があります。保育にじっくり取り組みたい保育士さん必見の園です。

この保育園の施設概要

施設名 にじのそら保育園 芝浦
勤務地 東京都港区芝浦一丁目14-6 BSビル1
最寄り駅 JR 田町駅 徒歩10分

写真でわかる!保育園の様子