愛隣保育園社会福祉法人 愛隣団

地域福祉とともに歩み続ける
子どもも大人も楽しく通える保育園

台東区・根岸の地に、大正9(1920)年に創立された愛隣団。昭和23(1948)年、児童福祉法による認可を受けた保育園。たくさんの子どもたちを世の中に送り出してきました。あたたかく私たちを迎えてくださったのは、菅原智子園長先生。何よりもまず、子どもたちが日々無理なく楽しく健やかに過ごせる保育環境、そして働きやすい職場づくりに取り組んでいらっしゃいます。これまでの歴史や保育への想いをお話していただきました。

愛隣保育園

<園のなりたち>

町と子育て支援の歴史を見守り続けて。
保育園の在り方も変わってきた。

0歳児保育室。手作りの建具、ベビーベッドは、子どもの育ちに合わせて臨機応変に配置。
0歳児保育室。手作りの建具、ベビーベッドは、子どもの育ちに合わせて臨機応変に配置。

地域の貧困を何とかしようと、カナダの宣教師たちが全国で活動していたのですね。そんなとき、地域福祉のための拠点を作るならば、無償で別荘の土地を提供しますよ、と言ってくださった地主さんがいらっしゃって、建物ごと土地を寄付していただいたのです。その頃には「愛隣団」として活動を始めていました。そして昭和2(1927)年当時はめずらしかった4階建てコンクリートの建物をここに作ったのです。現在は保育園と学童保育が中心ですが、創立当初から小学校や中学校、診療所、児童遊園など、さまざまな事業を展開していました。

旧園舎は、外から見たら、保育園をやっているとは思えないような、昔の病院みたいな建物だったんですね。関東大震災や空襲などで建物が被害を受けながらも地道に活動を続け、焼けている建物を修復しながら使っておりましたから、コンクリートを取ると鉄骨がボロボロ。そして柱がとても大きく、私が保育士だったころは、保育室の真ん中にどん、と大きな柱があって。この柱がなかったらいいのに、と思いながらも、もう当たり前の中でずっと保育をしてきたって感じでした。

3.11の東日本大震災の際にも、とくに大きな被害があったわけではないのですが、さすがに、古い建物を直し直し使っていたのもあり、「なんとなく不安だよね」と職員からも声が上がりました。そして約10年前に、園舎を建て替えたのです。前理事長は、東大の建築科を出ていたこともあり、とにかく建築デザインにはこだわりました。3階建ての園舎はとても広くて、コンクリート打ちっぱなしの壁面や天然木をふんだんに使った内装になっています。天然木の床は、とてもいいのですが床暖房が入っていることもあって、メンテナンスが思いのほか大変なんですけどね!見学に来る方は皆さん「素敵ですね」と言ってくださいます。

実は私自身、最初の就職先がこちらの園なんです。それから35年以上経ちました。一つのところでずっといるわけですけれど、保育園も世の中もいろいろな歴史を目撃してきました。園長になってからは10年以上になります。

「子どもはもちろん、保育士として毎日楽しく通える、過ごせる保育園をめざしています」と、菅原智子園長先生。
「子どもはもちろん、保育士として毎日楽しく通える、過ごせる保育園をめざしています」と、菅原智子園長先生。

就任した当時は、外の集まりなどに行くと、園長先生どちらですか?と、探されちゃうようなまだ心もとない感じで。とにかくわからないことばかり。台東区の園長会って小さいんですけれどね、私立は株式会社を入れると60近くあるんですけど、純粋な私立園でいうと11園です。そこにちゃんと顔を繋いでいただいて、お世話をお願いしますってお願いしてくれたことで、色々面倒をみていただきました。
もともと楽に生きたい、楽しく生きたいというタイプなので、自分が園長になるなんてとても想像できませんでしたが、いろいろなご縁や環境が繋がって、引き継ぐことになりました。

ひと昔前は、保育園はかわいそうな子が集まる、みたいなイメージがあったと思うんです。「かわいそうな子」という風に世間から見られないように…「保育園っていいね」と思われるような園づくりをしよう、なんて時代もありました。
保育園も保護者も、子どもを預かってあげている、預かってもらっているとか、子どもは言うことを聞くのが当たり前、という時代でしたので、午後3時とか4時には、ほぼ全員がお迎え。幼稚園のスタイルがまだ残っていました。
お迎えの時間になると、園庭に保護者が集まってきて。そしてホールで子どもたちが各クラスごとに並び「〇〇ちゃん、さようなら」と保護者に引き渡していました。

しかしあるとき、一人の保護者が「夕方6時まで、預かってもらいたい」と。みんな早く帰っているのに、延長保育なんて……と今ではとても考えられませんが、そう思った職員は多かったと思います。
その当時は、行政も今でいう延長保育もなかったので、「それでは特別にやりましょう」ということになりました。特例保育というものです。二人のご兄弟のための延長保育が始まった。今のような決まりもなく、保育士が一人いればよかったのですが、そのうちに、6時までの保育がスタンダードになり、そのあとで補助金もつくようになりました。

<保育の方針・内容>

自分で考えて動くと、自然に自立していく
子どもたちの中にある当たり前の力を信じて

自分の好きな遊びに遊び込める保育環境。大人は指導するのではなく、ゆったりと見守る。
自分の好きな遊びに遊び込める保育環境。大人は指導するのではなく、ゆったりと見守る。

0歳児から未就学児までの全体的な計画は、園全体の保育理念・方針のもとつくっていますが、時代が変わっても子どもの育ちは変わりませんので、よっぽどのことがない限り変えることはありません。
その計画のもと、各年齢に合わせたカリキュラムをつくっているわけですが、その年その月の子どもの姿に合わせて、指導計画は柔軟に変えています。0歳から5歳までの、つながりのあるカリキュラムがあり、それを各クラスが月間カリキュラムに落とし込んでいます。
最終的には小学校に向けてという目標があります。そこに向けて各年齢の保育計画があります。

0、1、2歳は複数担任制。情緒の安定を図りながら、基本的な生活習慣を身につけること、そして一人ひとりの個性と生活リズムを大切にしながら、のんびりのびのびと過ごせるように、保育環境を整えています。基本的にはできるだけ持ち上がりでクラス担任を決めています。もちろん担任全員が持ち上がれるわけではないのですが、やっぱり成長を見続けると、子どもはもちろん保護者も安心感が生まれますね。

3、4、5歳児は、集団としての楽しさや学びを取り入れながら、遊びを中心にのびのびと生活できることを方針にしています。今年の夏は暑すぎてたくさん出来ませんでしたが、10分でも15分でも外遊びをするようにしています。プール遊びも、お天気良ければ短時間でもやります。

天井が高く、陽の光がやさしく差し込むホール。誕生会やクリスマス会など、園の主たる行事が行われる。
天井が高く、陽の光がやさしく差し込むホール。誕生会やクリスマス会など、園の主たる行事が行われる。

また当園はキリスト教精神に基づく保育園でもありますので、特に、クリスマス会は中心となる行事。1か月を通してクリスマスを楽しみにできるよう毎年工夫しています。

5歳児は、夏と冬にキャンプに行きます。この保育園は庭が広いので、ふだんは公園には散歩に行きません。ただ、5歳児なると外でマナー、ルールを知るという目的で、課外活動をします。9月以降毎月1回、園外保育に出かけるんです。職員には、課外活動する際の研修も行います。いま、子どもの人数漏れとか置き忘れとか信じられないことが起こっていますよね。ほかの保育園さんでも、子どもを公園に忘れてきちゃうなんてニュースもありました。園の中に子どもがいないのに気づかないなんて。「信じられない。なんでそうなっちゃうの?」と思いますが、現実的に、見る視点がぼやけちゃってきている保育士が増えてきてしまっているのかもしれません。戸外活動は特に、人数確認、安全確認、周囲の方に対する気配り、子どもへの声かけなどについて、しっかりと職員にも研修を行ってから実施しています。

保育中は、園内でも園外でも大きな声を張り上げている保育士はほとんどいないですね。
日常の保育活動や生活がしっかり出来ているからこそ、課外活動も楽しめます。園外では、日頃は見られない子どもの姿や、町の様子も見ることができます。園内にいるより子どもがしっかりしているんですね(笑)。できるだけ子どもたち自らが考えて行動できるように、先生がいないと子どもが何も動けない、笛を吹かないと並べないという子どもにならないように心がけています。

さらに園舎の3階には、卒園児限定ではありますが、学童保育があります。小さい頃から同じ環境で育っているので、人間関係も出来ていますし、何より安心感があります。「ただいま」とここに帰ってきて、習い事にもここから出かけます。保護者の方にはとても喜ばれていますよ。

<地域とのつながり>

地域に根ざし愛されて100年以上
世代を超えて「愛隣でよかった」といわれる園に

窓が大きく、広々とした室内
窓が大きく、広々とした室内

台東区は下町で、面積的には小さいのですが、地域によって格差もあります。
根岸という地域は、隣が荒川区でちょうど区境にあります。

北千住は電車が通ってすごく立派になっているのですが、三ノ輪駅は何十年と変わらない。私が、入社したときからのままです。三ノ輪ってどこ?って言われたり。北千住から2つだよ、上野から2つだよって(笑)いいところなんですけどね。
外国のお子さんは、中国・韓国の方が多く、日本語も達者な方も多いです。言葉の面で苦労したことはあまりないですね。

また、こちらの地域は、住みやすいこともあるのか、おじいちゃん、おばあちゃんからお孫さんまで、代々住み続けている人が多いようです
卒園児さんが親になって、戻ってきてくれることもあります。そんなとき、ああ、私たちの保育はこれでよかったんだな、って感慨深い気持ちになります。

入園に際しては、可能な限り丁寧に説明しています。
たとえば、保護者の方から「なぜ運動会がないのですか」というご質問があったします。日々の保育の延長線上で運動遊びはしていますが、イベントとしての運動会は行っていません。

そうではなく、普段のカリキュラムの中に、綱引きや玉入れ、かけっこ、リレーなどの運動遊びを取り入れています。
いわゆるイベントとしての、“見せるための運動会”に向けて練習させる、何かさせるというのは、子どもたちの遊びを中断することになってしまいます。しかも1日2日で覚えられることではないので、4月5月から準備や練習を始めなければならないことになります。子どもたちの生活や遊びにしわ寄せがいってしまうわけです。

運動が好き、ダンスが好きな子どもはとても楽しめると思うのですが、子どもの興味・関心は多様です。運動が得意な子、ダンスが得意な子は、好きだから負担にはならないことが多いと思いますが、運動やダンスが苦手な子にとっては、ものすごく苦痛な保育になってしまうんですよね。

<保育書類・業務について>

すべてがICTで解決されるわけではない。
人が書いた字”が保育士を育てる一面もある。

壁には手作りの創作物
壁には手作りの創作物

若い方は、PCやタブレットが得意な方も多いと思います。
でもどんなに時代が変わっても、保育中に気づいたことなどはちょちょっとメモを残したりしたほうが早い場合もありますね。いろいろなソフトやアプリも出ていますが、まだ内容や機能などが不十分なところもありますので、慎重に検討しているところです。

手書きの書類は、面倒くさいところがまた、保育力を底上げする力になったりもします。
記録を読み返して、この時どうだったかなとか、それを見れば記憶がよみがえります。ただ、保育の日誌や書類は、やらされるものではなく、保育をよくしていくためのもの。
何よりも大切なのは書類ではなく、日々の保育。書類には時間をかけない、というのが方針です。

私自身、園長業務が忙しくて、なかなか保育の現場に様子を見に行くことができないときもあるのですが、主任と連携をとっています。しっかりと報告をあげてくれるのでとても信頼しています。

週に1回、午後に職員会議があります。全員を集めることが難しいので二部制にしています。何かあれば直接職員に声をかけるようにもしています。

園内の情報はしっかりと共有・蓄積されていると思います。例えば、クラスの子どもの話を担任以外の職員も把握していることが大前提なので、「めったに入らない先生がここに入ったことで、ちょっと心配だわ」というようなことは、今の段階ではありませんね。
日々の連絡は「申し送り」でしっかり行います。

朝のグループからの申し送りをノートに書きます。それを日中の先生から夕方の先生へと渡す。それに沿って保護者に伝えるというシンプルな仕組みなのですが、子どもの状況や連絡の漏れも少なく、保護者からの信頼も高いと自負しています。
クラス会議やリーダー会議も可能な限り行っています。

<働きやすい職場づくり>

研修、保護者対応……職員と話し合いながら
積み上げてきたことを大切に。

備え付けのプール
備え付けのプール

全職員の研修としては、年度末の3月の最後の土日を使って行っています。法人全体の方針や園の方針を伝えます。その後に、各グループ、クラスに分かれて、次年度への準備をします。保育がスタートしちゃうとみんなが集まって話をすることはめったに出来ないので、とても貴重な時間です。

新人の職員には、2~3月のうちに研修を行っています。新人研修は、就業規則や給与規定の説明、園で最低限必要なマナーやマニュアルの話をさせてもらっています。

保護者対応に関しては、職員が困っていることは、必ず報告・連絡が来るようになっています。一人のお子さんの事に関しても、すべて報告が上がってきます。クラスの先生が一人で悩まなくていいようにしています。

若い頃、自分も同じようにしてもらったんですよね。保護者対応で悩んでいるときに、園長先生が「あとはこっちで引き受けるから、あなたは保育子どもたちの方だけ見ていてね」って。そう言ってくれたことで、すごく気持ちが楽になりありがたかったですよね

ささいなことでも報告さえしてくれれば、自分ひとりで抱えて悩んでしまうリスクを避けることができますよね。自分だけで解決できない、これは無理かも、ということは主任や園長に投げてくれればいいんです。保育士がつぶれないように、前向きに保育に集中できる環境を整えること。それが園長の仕事だと思っています。

いまのところ、土曜日の保育は10人いるかいないかですが、どうしても保育園は、土日完全にお休みできる仕事ではありません。働く保護者の方のためにある保育園ですが、子育て支援の視点からも、サービスが過剰になっていくのは、違うのではないかと思うのです。子どもが楽しくて通えて、職員も楽しい保育園。その環境をつくることが大切だと思っています。いまは人材不足、特に保育士不足が続いている時代なので、保育士がいないと、預かりたくても預かれないわけです。

早番、遅番は、原則として正規職員を中心に回しています。パートさんは子育て中の方が多いので、反対に、早番遅番よりも、真ん中の方が確実に入っていただけるんですね。
また、園児限定ですが体調不良児の保育も行っています。台東区は、看護師が常勤なのですね。その環境を生かしてというところもあります。いつも通っている保育園なら、体調が悪くても、まったく知らない病児保育の施設に行くよりも子どもの負担も減りますしね。

変えるべきこと、変えられないもの。保育という営みを通して、私自身も日々学び続けています。歴史のある古い園ですが、職員の待遇や給与、人事制度なども、時代や社会のニーズに合わせて改善してきました。ぜひ、直接見学にいらしてください。当園の保育環境、職場環境の魅力を実際に体験していただけると思います。

(取材を終えて)

近代的な、美しくデザインされた広い園舎内は、子どもたちの声が楽しそうに響いているほかは、静かで落ち着いていて、とても居心地のよい空間。いつまでも滞在したくなる、通いたくなる保育園でした。「子どもと職員が、今日も楽しく通えているかな?」と、にこやかに見守る菅原園長先生のお話から、園の歴史や地域、そして保育への深い想いをたくさん学ばせてもらいました。

この保育園の施設概要

施設名 愛隣保育園
勤務地 東京都台東区根岸5丁目15-3
最寄り駅 三ノ輪駅 徒歩5分

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